「AIに仕事を取られる」の、プラスの面を考えてみたい
よく「AIに仕事を取られる」という話を聞く。
この話は、なんだかマイナスな意味で語られることが多いが、今回はプラスの面を考えてみたい。
もちろん、仕事の内容が変わっていくのは事実だと思う。
これまで人がやっていた作業が減る場面はあるし、それを不安に感じるのも自然なことだ。
ただ、「取られる」という言葉には、仕事の総量が決まっていて、それを人とAIで奪い合っているような響きがある。
実際に使ってみると、そういう感じではない。
減るのは作業で、増えるのは判断のほうだ。
そして、その入れ替わりが起きたときに何が変わるのかを考えてみたい。
何時間もかかっていた仕事が、短時間で終わったら
AIに指示を出し、繰り返し作業や情報整理などを自動で進めてもらえたら、こんなにうれしいことはないと思う。
これまで何時間もかけていた仕事が短時間で終われば、人はより重要な判断や、新しいアイデアを考えることに時間を使えるようになる。
具体的に何が減るかというと、たいていは同じ形の作業だ。
同じ形式で送るメールの下書き。集めた情報の要約。表記の統一。長い資料から必要な箇所を探す作業。似たパターンの繰り返し。
こういう作業には共通点がある。
やれば確実に終わるが、やっている間は他のことができない。
そして、終わっても誰にも気づかれない。
減らして困る人がいない作業から先に減らせるのは、かなり大きいと思う。
空いた時間は、自動では埋まらない
ここで正直に書いておきたいことがある。
作業が減ったからといって、その時間が自動的に「重要な判断」や「新しいアイデア」に変わるわけではない。
放っておくと、たいていは別の作業で埋まる。
前は3時間かかっていた仕事が1時間で終わった。ならば、空いた2時間で別の作業を3つ入れよう、という流れになりやすい。
それでも処理量は増えているので、間違ってはいない。
ただ、それだけだと、忙しさは変わらないまま量が増えただけになる。
だから、空いた時間を何に使うのかは、先に決めておいたほうがいい。
考える時間にするのか。休む時間にするのか。家族と過ごす時間にするのか。人に会う時間にするのか。
決めていないと、空いた時間は勝手に埋まる。
これは意志の強さの話ではなく、単純に、埋めやすいものが先に入るという話だ。
早く終わることより、いつでも着手できること
もう一つ、実際に使ってみて効いたのは、速さそのものよりも、着手のしやすさだった。
まとまった時間が取れないと進まない仕事は、けっこう多い。
腰を据えて考える。ゼロから書き出す。資料を最初から読む。
こういう仕事は、30分の隙間があっても手をつけにくい。始めるまでの助走が長いからだ。
そこにAIが入ると、助走が短くなる。
たたき台がある状態から始められる。要点だけ先に掴める。前回の続きを思い出すのが早くなる。
すると、細切れの時間でも進められるようになる。
これは、まとまった時間を取りにくい人ほど効く。
子どもを寝かしつけた後の30分。通院の待ち時間。早く目が覚めた朝。
そういう時間を仕事に使えるかどうかは、その人のやる気ではなく、仕事の始めやすさで決まっている。
人生の変化に、働き方が耐えられるか
さらに、AIを活用した働き方は、人生の変化にも対応しやすい。
結婚、育児、介護、体調の変化などによって、これまでと同じ時間や場所で働くことが難しくなる場合もある。
そんなとき、AIが自分の仕事を補助してくれれば、働く時間を調整したり、自宅で仕事を続けたりする選択肢が広がる。
こうした変化は、誰にでも起こりうる。
そして多くの場合、事前に日程を選べない。
介護は、ある日始まる。体調の変化も、予定して起きるものではない。
だからこそ、変化が起きてから対応しようとすると間に合わない。
働き方が変化に耐えられるかどうかは、平時のうちにどれだけ準備できているかで決まる。
AIに任せられる作業を増やしておくことは、その準備の一つになる。
もちろん、AIがあれば全部解決するという話ではない。制度も、周囲の理解も、仕事の分け方も必要になる。
それでも、選択肢が一つ増えるかどうかは大きい。
辞めるしかないと思っていた状況で、続ける方法が残っているなら、それは十分に意味がある。
属人化は、AIに渡せる形にすると解ける
もう少し会社側の話を書くと、AIの導入がいちばん効くのは、属人化しているところだと思っている。
その人にしかできない仕事があると、その人は休めない。
引き継ぎ資料を作る時間もないまま、日々の業務が回っていく。
ここでAIに任せようとすると、面白いことが起きる。
AIに任せるには、手順を言葉にする必要がある。
何をどういう順番でやっているのか。判断の基準は何か。例外はどんなときか。
これを書き出す作業は、そのまま引き継ぎ資料を作る作業になる。
つまり、AIに渡せる形に整理すると、人にも渡せる形になっている。
自動化できたかどうかにかかわらず、この整理自体に価値がある。
誰かが休んでも止まらない状態は、こうやって作られていく。
任せるものと、任せないもの
大切なのは、AIと仕事を奪い合うのではなく、AIに何を任せ、自分は何をするのかを考えることだ。
線引きの目安として、私が使っているのは次のような見方だ。
手順が決まっていて、間違えても取り返しがつくもの。ここはAIに任せやすい。
判断が必要で、間違えると誰かに影響が出るもの。ここは人が持つ。
そして、任せた場合でも、確認する人は必要になる。
出てきたものをそのまま使うなら、それは任せたのではなく、丸投げしたことになる。
責任の所在は移らない。
このあたりを曖昧にしたまま導入すると、後で誰も検証できない仕事が積み上がる。
任せる範囲と、確認の仕方を決める。
それだけで、使い方はだいぶ安定する。
何から始めるか
いきなり全部を見直す必要はない。
始めやすいのは、頻度が高くて、手順が決まっていて、間違えても致命的にならない作業だ。
毎日やっている。毎回同じ流れ。誰がやっても結果が変わらない。
こういう作業を一つ選んで、AIに渡してみる。
うまくいけば時間が浮くし、うまくいかなくても、その作業の手順が言葉になって残る。
どちらに転んでも損はしない。
逆に、最初から判断の重い仕事や、前例のない仕事を任せようとすると、たいてい失敗する。
そして一度失敗すると、「やっぱり使えない」で止まってしまう。
小さいところから始めて、任せられる範囲を少しずつ広げていくほうが、結果的に早い。
チェックリスト:AIに任せる準備ができているか
- 毎日または毎週やっている、手順が決まった作業を洗い出している。
- そのうち、間違えても取り返しがつくものから着手している。
- 作業の手順と判断基準を、言葉で書き出している。
- AIに任せた結果を、誰が確認するか決めている。
- 判断と責任は人が持つ、という線を引いている。
- 空いた時間を何に使うか、先に決めている。
- その人しかできない仕事を把握している。
- 誰かが長期に休んでも、業務が止まらないか確認している。
AIは、働き方を柔軟にするパートナー
AIは人の代わりではなく、働き方を柔軟にするパートナーになっていくのではないだろうか。
代わりになるという話にすると、どうしても勝ち負けの話になる。
けれど実際に起きているのは、もっと地味な変化だと思う。
面倒な作業が減る。始めるまでが早くなる。場所や時間の制約が少し緩む。
その積み重ねが、続けられる働き方につながっていく。
仕事を取られるかどうかではなく、何を任せて、自分は何をするのか。
そこを自分で決められる人が、これからは働きやすくなるのだと思う。
FREETANCEで大切にしていること
FREETANCEでは、AI動画制作やWeb制作に加えて、業務でのAI活用の相談も受けている。
そこで最初にやるのは、ツールの選定ではなく、業務の棚卸しだ。
どの作業が繰り返しなのか。どこに判断が入っているのか。誰しかできない仕事はどれか。
これが分かると、任せられる範囲と、任せてはいけない範囲が見えてくる。
導入そのものより、この整理のほうが時間はかかる。けれど、ここを飛ばすとうまくいかない。
AIを使って業務を軽くしたい、属人化を解消したい、働き方の選択肢を増やしたい。
そういうご相談は、FREETANCEへお寄せください。



